見積・注文・納品・請求の突合を自動化(160枚を32秒・8件のズレを検出)

2026年8月15日 / 実演

「請求したのに入金がない」

そう思って督促の電話をかけたら、先方は注文どおりの金額をきっちり払っていて、間違っていたのはこちらの請求書だった。

今回やってみた40案件のうち、1件が実際にこれでした。

見積書・注文書・納品書・請求書。この4枚は、本来ぜんぶ同じ金額になるはずのものです。でも手で作っている限り、どこかで必ずずれます。今回はそれを機械に突き合わせさせました。

用意したもの

架空のサンプル会社(株式会社サンプル建設)の書類一式です。顧客の実データは1枚も使っていません。

用意したもの 数
見積書・注文書・納品書・請求書 40案件ぶん=PDF 160枚
入金明細(Excel) 62行(うち入金 38行)

40案件のうち、わざとおかしくしたものが何件か混ざっています。何件どこに入れたかは、突合させる側には教えていません。

手でやると、どれくらいかかるか

1案件につき、4枚の書類を並べて

を見ていきます。慎重にやって1案件5分として、40案件で200分(3時間20分)。 そのあとに入金明細62行との消し込みが残ります。

※ この200分は「1案件5分」を置いた推計です。実際に測った数字ではありません。

出した指示

1_素材キット の40案件を、見積書・注文書・納品書・請求書の4枚で突き合わせてください。
・4枚の合計金額が一致しているか
・明細行の数量・単価が途中で変わっていないか
・日付が 見積→注文→納品→請求 の順になっているか
・振込先が他の案件と違っていないか
・_入金明細.xlsx と照らして、請求に対する入金があるか
おかしいところは案件番号と根拠(どのファイルの何行目か)つきで出してください。

かかった時間

31.7秒でした。

読み取り(PDF160枚+入金明細62行)から、突合、Excel 14シートの作成まで全部込みです。 実測は今日(2026年8月15日)に実際に走らせて測ったものです。

3時間20分(推計)が32秒になった、という話ではありません。 正確には「人がやると3時間かかるので、実際には誰もやっていなかった作業」が、32秒でできるようになった、という話です。ここが大事なところだと思っています。

見つかったもの(8件・5案件)

35案件は金額・日付・振込先・入金すべて問題なしでした。残り5案件がこれです。

突合結果のExcel。要対応8件・参考1件が、案件番号・区分・内容・差額・根拠ファイル名の列で一覧になっている
出てきた一覧です。右端に「根拠ファイル」の列があるのが大事なところで、どのPDFの何を見てそう言っているのかが全部残ります。これが無いと、確認しに戻れません

★案件007:「未入金」ではなく、請求書のミスでした

これが今回いちばんおもしろい1件です。

書類 合計
見積書 1,036,530円
注文書 1,036,530円
納品書 1,036,530円
請求書 1,179,090円(+142,560円)
入金 1,036,530円

請求書の1行目「木造解体工事」の数量だけが 80 → 92 に変わっていました(金額 864,000円 → 993,600円)。

入金額は1,036,530円。見積・注文・納品の金額とぴったり一致します。 つまり先方は注文どおりに払っていて、間違っているのはこちらの請求書のほうです。

案件007の見積書(上)と請求書(下)を並べたところ。赤枠が違っている3か所で、明細1行目の数量が80から92に、金額が864,000円から993,600円に、合計が1,036,530円から1,179,090円に変わっている
上が見積書、下が請求書。赤い枠が違っている3か所です。数量だけが 80 → 92 に変わって、あとは全部同じ。並べて見れば分かりますが、請求書だけを見ていたら絶対に気づきません

金額の差だけを見て「142,560円足りません」と督促していたら、恥をかいていました。

案件005・022:本当に入金がありませんでした

案件 請求額 請求日 支払期限 経過
005 566,720円 2025-06-16 2025-08-28 352日
022 710,930円 2025-11-03 2026-01-28 199日

合計127万円が、1年近く放置されていた計算になります。

案件019:納品日が、見積書より前でした

日付をさかのぼって書類を作ると、こうなります。書類としては通ってしまいます。

案件031:振込先が1件だけ違いました

口座名義はどちらも同じです。振込先の書き換えは、気づきにくいところの代表です。

合っているかを確認しました

ここを飛ばすと、記事として意味がありません。

検知した5案件は、全部それぞれの元のPDFを開いて、目で見て裏取りしました。 数量80→92も、納品日8/22も、口座番号9988776も、実物にそのとおり書いてあります。

そのうえで、残り35案件については「問題なし」と出た側の確認もしています。 これは「見つけられなかっただけ」の可能性があるので、突合の観点を14シートに全部書き出して、 何を見て何を見ていないかが分かる形にしました。

できなかったこと

ここが一番書かれない部分だと思うので、正直に書きます。

1. 現金・手形・相殺で受け取ったぶんは追えません。 今回照らしたのは銀行の入金明細だけです。現金で受け取っていれば「未入金」と出ます。 案件005と022も、本当に未回収なのか、別の方法で受け取っているのかは、この突合だけでは分かりません。

2. 入金明細の摘要が途中で切れているものがあります。 「フリコミ サトウ」で切れていると、佐藤様なのか佐藤建設なのか判別できません。 今回は金額と日付で当てましたが、同額の請求が2件あったら当てられません。

3. どれが正しくて、どれが間違いかは、書類だけでは決まりません。 案件007も、機械が言えるのは「請求書だけ違う」までです。 本当に数量が92だったのに見積が80のままだった、という可能性も残ります。 最後は人が確認するしかありません。

この3つを分かったうえで使うなら、有効です。 分からずに「AIが未回収を見つけてくれた」と思って督促すると、事故ります。

そのまま社内通達まで作りました

見つけて終わりでは、来月また同じことが起きます。 なので再発防止の社内通達(A4・4ページ)まで作りました。

要点はこの6つです。

  1. 請求書は納品書から作る。新規に入力しない(打ち直したところが間違いの入り口)
  2. 数量・単価が変わったら請求書で調整しない。変更見積+変更注文書を先に取り交わす
  3. 日付は 見積 → 注文 → 納品 → 請求 の順。さかのぼった日付で作らない
  4. 振込先はテンプレートの文言に手を入れない。変更は経理責任者の事前承認+記録
  5. 請求書を出したら控えに支払期限を書く(消し込みの基準になる)
  6. 発行前にチェックリストで本人が確認
社内通達の別紙2「請求書を出す前の確認チェックリスト」。9項目にチェック欄があり、それぞれ何を見て確認するかが右の列に書かれている。担当者名と確認日の記入欄もある
通達に付けた別紙2です。「確認すること」の隣に「見るもの」の列を置いたのが要点で、これが無いと「確認しました」が形だけになります。所要30秒に収まる項目数にしてあります

書くときに1つだけ気をつけたことがあります。犯人探しにしないことです。

通達の本文に「個人の責任を問うためのものではない」「手で作っていれば必ず起きる。起きない手順に変えるのが目的」「自己申告した内容を責めることはしない」と明記しました。

通達で人を締めると、次から隠されて、発見が遅れます。

この作業をやらせるべきか

書類が4枚に分かれている業種なら、やる価値があります。 建設業・製造業・卸のように、見積 → 注文 → 納品 → 請求 と流れる商売です。

逆に、見積と請求しかない業種では、ここまでの仕組みは要りません。 そういう場合はそう申し上げます。

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