手書きの作業日報25枚を、スマホ写真のまま渡してExcel一覧に(実測28分21秒)
「午後より降雨のため15時終了」
現場の日報に、そう書いてありました。ところが同じ紙の中で、6人のうち5人が16時30分から18時まで働いたことになっています。
15時に終わっているのは、1人だけでした。
紙を1枚ずつめくって気づける矛盾ではないと思います。今回の25枚の中に、これと同じ食い違いが5件ありました。
用意したもの
架空のサンプル会社(株式会社サンプル建設)の手書き作業日報です。実在の会社・個人の日報は1枚も使っていません。
| 用意したもの | 数 |
|---|---|
| 手書きの作業日報 | 25枚(スマホで撮った写真・傾きと影あり) |
| そこに書かれている作業 | のべ110人分・合計858時間(107.25人工) |
| 期間 | 2025年6月2日〜6月30日(日曜だけ休み) |
| 現場 / 作業員 / 作業内容 | 8か所 / 10名 / 14種類 |

出した指示
1_素材キット の手書き日報25枚を読んで、Excelの一覧表にしてください。
・日付・現場名・氏名・作業内容・開始・終了・作業時間・天候・使用機械・搬入資材
・特記事項と延べ人工も拾ってください
・読み取りに自信がないところは、印を付けて分かるようにしてください
写真の向きをそろえる、コントラストを上げる、といった下ごしらえは何もしていません。
読み間違いをどう潰したか
手書きを読ませるときに一番こわいのは、間違って読んだことに気づけないことです。数字が1つ違っても、表としては成立してしまいます。
今回は3段構えにしました。
- 1枚を2つのAIに、別々のやり方で読ませる(片方は漢字を重視、もう片方は数字を重視する指示)
- 2つの結果が食い違った箇所だけ、3人目に確認させる
- そのうえで、110人分すべてを人の目でも照合する
結果、25枚とも2つの結果が完全に一致しました。3人目の出番はありませんでした。
そのうえで氏名欄110人ぶん・ヘッダー25枚ぶん・特記事項25枚ぶんを切り出して並べ、目で見て確認しています。全部AIの読み取りと一致していました。
なお、AIが「字の形で迷った」と申告してきた箇所が30件あります。これは全部、人の目と検算の両方で裏を取りました。
かかった時間
一覧表ができるまでが28分21秒です。編集で早送りしていません。
| 何に | 時間 |
|---|---|
| 素材の確認と段取り | 2分54秒 |
| 25枚を2回ずつ読む(AI 10体が並列) | 3分55秒 |
| 結果の取り出し+人の目で全枚数照合 | 4分45秒 |
| 検算11種+Excel 8シートの作成・書式直し4回 | 14分23秒 |
| 答え合わせと報告 | 2分24秒 |
いちばん時間がかかったのは、読み取りではありませんでした。
読み取りは25枚を2回ずつ、のべ50回読んで3分55秒。1枚あたり9.4秒です。時間を食ったのはExcelの作り込みで14分23秒でした。条件付き書式で色が出ない、グラフの軸ラベルが消える、といったことで3回作り直しています。
一発では通っていません。そこも切らずに出しています。
できた一覧表
8シート構成にしました。①日報一覧(110行)/②要確認/③人ごと/④現場ごと/⑤人×現場/⑥日別/⑦作業内容べつ/⑧現場カレンダーです。

11種類の検算をかけました
一覧にして終わりだと、読み間違いが混ざったまま残ります。次の検算を機械でかけています。
| 見たこと | 結果 |
|---|---|
| 作業時間=終了−開始−休憩1時間になっているか | 110人分すべて一致 |
| 延べ人工=合計時間÷8 になっているか | 25枚すべて一致 |
| 紙に書かれた曜日と、実際の曜日が合っているか | 25枚すべて一致 |
| 記入もれ | 0件 |
| 同じ日に同じ人が2か所の現場にいないか | 0件 |
| 平日なのに日報が無い日 | 0日 |
| 特記事項の「15時終了」と、各人の終了時刻 | ★5件 食い違い |
| 天候欄と特記事項(雨の記載) | 3件 食い違い(参考) |
引っかかったのは最後の2つだけです。
★6月9日に何が起きているか
食い違った5件のうち、いちばん分かりやすいのが6月9日です。
| 書いてあること | |
|---|---|
| 特記事項 | 午後より降雨のため15時終了 |
| 標本 洋一 | 7:30〜18:00(9.5時間) |
| 標本 三郎 | 8:00〜16:30(7.5時間) |
| 試作 京子 | 8:00〜15:00(6時間) |
| 見本 花子 | 8:00〜16:30(7.5時間) |
| 仮谷 健二 | 7:30〜16:30(8時間) |
| 仮谷 五郎 | 8:00〜17:00(8時間) |
6人のうち5人が15時を超えています。15時で終わっているのは試作 京子さん1人だけです。
この日の延べ人工は5.8125人(合計46.5時間÷8)として計算されています。もし本当に全員15時で終わっていたなら4.625人です。1.1875人ぶん違います。
1日ぶんならわずかな差ですが、これが月に5件、12か月あれば、原価も労務費も静かにずれ続けます。
ここからが実際の業務です
一覧表を作って「5件おかしいですよ」と言うだけなら、そこで止まります。現場に確認してもらわないと、どちらが正しいかは決まりません。
なので、そのまま確認シート(A4 1枚)と、上長宛のメール文面まで作らせました。

このシートとメール文面までで12分09秒。一覧表と合わせて40分30秒です。
正直に書いておくこと
1. この25枚には、わざと仕込んだ間違いを入れていません。
出てきた5件は、サンプルを作るときに特記事項を機械が割り当てた結果、たまたま噛み合わなくなったものです。「AIが仕込みを見つけた」という話ではありません。
ただし紙の上では実際に矛盾しています。実務でこの日報が回ってきたら、拾うべきものです。
2. 「ファイル名と紙の日付が一致」という検算は、この素材では効いていません。
サンプルの写真はファイル名を機械が付けているので、構造上ずれようがないからです。実物の日報では効きますが、今回の「25枚すべて一致」は手柄ではありません。
3. どちらが正しいかは、書類だけでは決まりません。
6月9日も、機械が言えるのは「特記事項と終了時刻が噛み合っていない」までです。特記事項の書き間違いなのか、終了時刻の書き間違いなのかは、現場に聞かないと分かりません。だから確認シートを作りました。
4. 一覧にするだけなら、正直いろいろなAIでできます。
そこから「誰に何を聞くか」まで持っていけるかどうかが、分かれ目だと思っています。
この作業をやらせるべきか
紙の日報が毎月まとまった枚数で回ってくる会社なら、価値があります。建設・工事・設備・運送のように、現場と事務所が離れている商売です。
逆に、すでに勤怠システムに直接入力している会社では、ここまでの仕組みは要りません。そういう場合はそう申し上げます。
御社の場合はどうか
一番めんどうな業務を1つだけ教えてください。それがAIに渡せるかどうかをお返しします。
「渡せない」という結論になることもあります。そのときは正直にそうお伝えします。