様式がバラバラのExcel10個を1つの表に(そのまま足すと2,953万円ずれます)

2026年8月21日 / 実演

同じ会社の現場経費なのに、部署ごとにExcelの様式が違う。

列の順番が違う。見出しの名前が違う。1つのファイルの中に表が2つ入っている。日付が和暦だったり西暦だったり。

よくある話だと思います。今回はこれを10ファイル用意して、1つの表にまとめさせました。

そして、何も考えずに全部貼り付けて合計すると、2,953万円ずれます。

用意したもの

架空のサンプル会社(株式会社サンプル建設)の現場経費です。実在の会社の数字は1件も使っていません。

Excelファイル 10個(様式はすべてバラバラ)
明細 144件
期間 2025年7月1日〜9月29日
現場 / 費目 8現場 / 8費目
エクスプローラーに並んだ10個のExcelファイル。8月分.xlsx、sheet_20250930.xlsx、げんば経費(コピー).xlsx、経費まとめ(工務).xlsx、経費表_旧様式.xlsx、月別サマリ.xlsx、現場経費_7月_総務.xlsx、現場別集計.xlsx、材料費と外注費.xlsx、支払一覧_2025Q2.xlsx
渡した10個です。ファイル名からしてバラバラで、「8月分」なのか「7月_総務」なのか「2025Q2」なのか、粒度がそろっていません。実際の会社のフォルダも、だいたいこうなっていると思います

出した指示

1_素材キット の10ファイルを読んで、1つの表にまとめてください。
・様式が違うので、列の意味を見て寄せてください
・現場名と費目の表記ゆれがあれば名寄せしてください
・集計表と明細が混ざっていたら、集計表は足さないでください
・判断が必要なことは、勝手に決めずに聞いてください

そのまま足すと、いくらずれるか

ここがこの回の本題です。

金額
何も考えず全部貼り付けてSUMした場合 104,612,700円
正しい合計 75,078,600円
差 +29,534,100円(39%多い)

ずれる中身は3つです。

何が起きるか 金額への影響 理由
月別サマリ.xlsx を一緒に足してしまう +23,446,200円 これは明細ではなく集計表
「小計」行を明細と一緒に足してしまう +10,668,100円 現場別集計.xlsx の途中に3本ある。明細をもう一度足すので二重計上
全角で入力された金額が消える −4,580,200円 経費表_旧様式.xlsx の12件。全角の「807,400」をExcelは数字ではなく文章として扱う
社長向けの要約資料の1ページ目。結論の数字として3か月の現場経費75,078,600円、明細144件、1件あたり平均521,379円などが表になっている。その下に「そのまま10ファイルを貼り付けて足すと、2,953万円ずれます」という見出しと、ずれる3つの理由の表がある
そのまま社長向けの要約(A4 5ページ)まで作らせました。「いくらだったか」より先に「そのまま足すといくらずれるか」を置いています。読む側が知りたいのは、たぶんそっちだからです

いちばん怖いのは3つ目です

上の2つは、足しすぎる方向のミスです。合計が明らかに大きくなるので、「あれ、多くないか」と気づける可能性があります。

3つ目は違います。

全角で入力された金額は、エラーも警告も出ません。Excelはそれを数字ではなく文章として扱うので、SUMが数えないだけです。画面上は「807,400」と見えているのに、合計欄の数字が静かに458万円減ります。

セルの色も変わりません。気づく方法は、件数を数えるくらいしかありません。

AIが自分でバグを見つけて直しました

途中で、こういうことが起きました。

Excelを組み立てるときに合計式が最終行を取りこぼして、明細合計が246,400円少なくなっていたんです。

これをAIが自分で見つけて、「これは私のミスでした、直して再度実行します」と言って直しました。

人が仕事をしているときと同じ動き方だと思いました。作って終わりではなく、作ったものを読み返して検算している。ここは切らずに動画に残しています。

判断が要ることは、勝手に決めずに聞いてきます

今回、18項目の質問が返ってきました。しかも「はい/いいえ」で選べる形で、その他の記入欄つきです。

たとえばこういうものです。

こちらは音声で「1番はこうしてください、2番は……」と返すだけで直っていきます。

決めたのはこの3つです。

論点 決めたこと
月別サマリ.xlsx 合計には足さない。別シートで「合わない証拠」として並べる
金額違い2組 どちらも消さずに残して、「要確認」の印を付ける
税込/税抜 「不明」と書いたまま。参考として税抜換算(約6,825万円)を併記

消さずに印を付けて残す、というのが大事なところだと思っています。機械が勝手に片方を捨てると、あとで確認しに戻れません。

月別サマリ.xlsx は、そもそも合っていませんでした

これは今回いちばんおかしかった1件です。

月別サマリ.xlsx は「現場×月」の集計表の形をしています。ところが他の9ファイルの集計になっていません。現場×月の24マス、全部が不一致でした。合計も2,344万円 対 7,507万円で、3倍以上違います。

9ファイルのどの組み合わせなら一致するのかを511通り全部試しても、一致しませんでした。

つまりこのファイルは、どこから来たのか分からない数字が入った集計表です。これを明細と一緒に足していたら、2,344万円が丸ごと乗ります。

うまくいった理由も書いておきます

ここまで自動でできたのには、はっきりした理由があります。

バラバラだったのは「入れもの」だけで、「言葉づかい」はそろっていたからです。

もし「玉名」「玉名現場」「たまな見本」と揺れていたら、ここまで機械では寄せられません。人が1件ずつ見て決めることになります。

様式がバラバラでも、言葉がそろっていれば機械で寄せられる。逆に言うと、まず言葉をそろえておくことが先だと思っています。

なお、日付は10ファイルすべて文字列で入っていました。このままでは並べ替えも月別集計もできません。ここは機械が日付に直しています。

何が分かったか

3か月の現場経費(正しい合計) 75,078,600円
現場別の上位3現場で 全体の46%
月別 7月2,541万/8月2,407万/9月2,558万(波は小さい)
費目のトップ 仮設リース 12,766,800円(全体の17%)

資材購入は12件と件数は少ないのですが、1件あたりの平均は692,775円で最も高い費目でした。件数で見るか金額で見るかで、目を付ける先が変わります。

かかった時間

全部で32分29秒でした。内訳はこうです。

「5分でできます」とは書きません。判断を待つ時間は必ず発生しますし、そこは人が答えるしかないからです。

できなかったこと

1. 税込か税抜かは、最後まで分かりませんでした。 どのファイルにも書かれていないからです。書いていないものは、機械にも分かりません。

2. 金額違いの2組は、どちらが正しいか決められませんでした。 機械が言えるのは「同じ日・同じ現場・同じ費目で金額が2つある」までです。領収書を見ないと決まりません。

3. 現場名や費目が揺れていたら、ここまで自動ではできません。 今回は揺れが0件だったので寄せられました。運が良かったのではなく、そういう素材だったというだけです。

この作業をやらせるべきか

部署ごと・担当者ごとにExcelが分かれている会社なら、価値があります。

ただし、先にやるべきなのは言葉をそろえることです。現場名と費目の呼び方を1つに決める。そこができていれば、様式がどれだけバラバラでも機械が寄せます。

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