様式がバラバラのExcel10個を1つの表に(そのまま足すと2,953万円ずれます)
同じ会社の現場経費なのに、部署ごとにExcelの様式が違う。
列の順番が違う。見出しの名前が違う。1つのファイルの中に表が2つ入っている。日付が和暦だったり西暦だったり。
よくある話だと思います。今回はこれを10ファイル用意して、1つの表にまとめさせました。
そして、何も考えずに全部貼り付けて合計すると、2,953万円ずれます。
用意したもの
架空のサンプル会社(株式会社サンプル建設)の現場経費です。実在の会社の数字は1件も使っていません。
| Excelファイル | 10個(様式はすべてバラバラ) |
| 明細 | 144件 |
| 期間 | 2025年7月1日〜9月29日 |
| 現場 / 費目 | 8現場 / 8費目 |

出した指示
1_素材キット の10ファイルを読んで、1つの表にまとめてください。
・様式が違うので、列の意味を見て寄せてください
・現場名と費目の表記ゆれがあれば名寄せしてください
・集計表と明細が混ざっていたら、集計表は足さないでください
・判断が必要なことは、勝手に決めずに聞いてください
そのまま足すと、いくらずれるか
ここがこの回の本題です。
| 金額 | |
|---|---|
| 何も考えず全部貼り付けてSUMした場合 | 104,612,700円 |
| 正しい合計 | 75,078,600円 |
| 差 | +29,534,100円(39%多い) |
ずれる中身は3つです。
| 何が起きるか | 金額への影響 | 理由 |
|---|---|---|
月別サマリ.xlsx を一緒に足してしまう |
+23,446,200円 | これは明細ではなく集計表 |
| 「小計」行を明細と一緒に足してしまう | +10,668,100円 | 現場別集計.xlsx の途中に3本ある。明細をもう一度足すので二重計上 |
| 全角で入力された金額が消える | −4,580,200円 | 経費表_旧様式.xlsx の12件。全角の「807,400」をExcelは数字ではなく文章として扱う |

いちばん怖いのは3つ目です
上の2つは、足しすぎる方向のミスです。合計が明らかに大きくなるので、「あれ、多くないか」と気づける可能性があります。
3つ目は違います。
全角で入力された金額は、エラーも警告も出ません。Excelはそれを数字ではなく文章として扱うので、SUMが数えないだけです。画面上は「807,400」と見えているのに、合計欄の数字が静かに458万円減ります。
セルの色も変わりません。気づく方法は、件数を数えるくらいしかありません。
AIが自分でバグを見つけて直しました
途中で、こういうことが起きました。
Excelを組み立てるときに合計式が最終行を取りこぼして、明細合計が246,400円少なくなっていたんです。
これをAIが自分で見つけて、「これは私のミスでした、直して再度実行します」と言って直しました。
人が仕事をしているときと同じ動き方だと思いました。作って終わりではなく、作ったものを読み返して検算している。ここは切らずに動画に残しています。
判断が要ることは、勝手に決めずに聞いてきます
今回、18項目の質問が返ってきました。しかも「はい/いいえ」で選べる形で、その他の記入欄つきです。
たとえばこういうものです。
月別サマリ.xlsxは他の9ファイルの集計になっていません。別扱いにしてよいですか- 同じ日・同じ現場・同じ費目で金額が違う組が2つあります。どちらを採用しますか
- 税込か税抜かが、どのファイルにも書かれていません。どう扱いますか
こちらは音声で「1番はこうしてください、2番は……」と返すだけで直っていきます。
決めたのはこの3つです。
| 論点 | 決めたこと |
|---|---|
月別サマリ.xlsx |
合計には足さない。別シートで「合わない証拠」として並べる |
| 金額違い2組 | どちらも消さずに残して、「要確認」の印を付ける |
| 税込/税抜 | 「不明」と書いたまま。参考として税抜換算(約6,825万円)を併記 |
消さずに印を付けて残す、というのが大事なところだと思っています。機械が勝手に片方を捨てると、あとで確認しに戻れません。
月別サマリ.xlsx は、そもそも合っていませんでした
これは今回いちばんおかしかった1件です。
月別サマリ.xlsx は「現場×月」の集計表の形をしています。ところが他の9ファイルの集計になっていません。現場×月の24マス、全部が不一致でした。合計も2,344万円 対 7,507万円で、3倍以上違います。
9ファイルのどの組み合わせなら一致するのかを511通り全部試しても、一致しませんでした。
つまりこのファイルは、どこから来たのか分からない数字が入った集計表です。これを明細と一緒に足していたら、2,344万円が丸ごと乗ります。
うまくいった理由も書いておきます
ここまで自動でできたのには、はっきりした理由があります。
バラバラだったのは「入れもの」だけで、「言葉づかい」はそろっていたからです。
- 現場名 8種類 … 表記ゆれ 0件
- 費目 8種類 … 表記ゆれ 0件
もし「玉名」「玉名現場」「たまな見本」と揺れていたら、ここまで機械では寄せられません。人が1件ずつ見て決めることになります。
様式がバラバラでも、言葉がそろっていれば機械で寄せられる。逆に言うと、まず言葉をそろえておくことが先だと思っています。
なお、日付は10ファイルすべて文字列で入っていました。このままでは並べ替えも月別集計もできません。ここは機械が日付に直しています。
何が分かったか
| 3か月の現場経費(正しい合計) | 75,078,600円 |
| 現場別の上位3現場で | 全体の46% |
| 月別 | 7月2,541万/8月2,407万/9月2,558万(波は小さい) |
| 費目のトップ | 仮設リース 12,766,800円(全体の17%) |
資材購入は12件と件数は少ないのですが、1件あたりの平均は692,775円で最も高い費目でした。件数で見るか金額で見るかで、目を付ける先が変わります。
かかった時間
全部で32分29秒でした。内訳はこうです。
- 10ファイルを読んで1つにまとめるところ自体は、約5分
- 残りは、AIが自分のバグを直していた時間、PDF化でつまずいた時間、こちらの判断を待っていた時間
「5分でできます」とは書きません。判断を待つ時間は必ず発生しますし、そこは人が答えるしかないからです。
できなかったこと
1. 税込か税抜かは、最後まで分かりませんでした。 どのファイルにも書かれていないからです。書いていないものは、機械にも分かりません。
2. 金額違いの2組は、どちらが正しいか決められませんでした。 機械が言えるのは「同じ日・同じ現場・同じ費目で金額が2つある」までです。領収書を見ないと決まりません。
3. 現場名や費目が揺れていたら、ここまで自動ではできません。 今回は揺れが0件だったので寄せられました。運が良かったのではなく、そういう素材だったというだけです。
この作業をやらせるべきか
部署ごと・担当者ごとにExcelが分かれている会社なら、価値があります。
ただし、先にやるべきなのは言葉をそろえることです。現場名と費目の呼び方を1つに決める。そこができていれば、様式がどれだけバラバラでも機械が寄せます。
御社の場合はどうか
一番めんどうな業務を1つだけ教えてください。それがAIに渡せるかどうかをお返しします。
「渡せない」という結論になることもあります。そのときは正直にそうお伝えします。