領収書とレシート150枚を、勘定科目ごとにAIで仕分けた(読み取り74秒・全体69分)
AIが「読み取りに自信がない」と印を付けた1枚を、現物で開きました。
手書きの領収書で、但し書きは「工具代として」、金額は13,900円。ところが同じ日・同じお店のレシートが別にあって、そちらは「昼食代 3名×1,423円」で税込4,695円。金額も中身も合っていません。
この回の山場は、150枚を74秒で読んだことではありません。AIが62枚まで絞ってくれたから、人がそこだけ見ればよかった、という順番のほうです。
用意したもの
架空のサンプル会社(株式会社サンプル建設)の領収書とレシートです。実在の取引先・顧客の情報は1件も使っていません。書類の中にも「架空のサンプルです」と入れてあります。
| 用意したもの | 数 |
|---|---|
| 印刷レシート | 100枚 |
| 手書きの領収書 | 50枚 |
| 支払先 / 期間 | 12か所 / 2025年7月1日〜10月29日 |
作業の前に、1つ聞きました
いきなり始めずに、先に「この作業に最適なモデルとエフォートは何か。まだ作業はしないでください」と聞いています。
返ってきた答えは、段取りと勘定科目の判断をする本体は上位のモデル、150枚を読む係は軽いモデルで、しかも「考えない設定」にする、というものでした。
理由が実務的でした。読む係の考える力を上げると、「食事処だから8%のはず」と、紙に書いていないものを補う方向に働くからです。念のため書いておくと、食事処で店内で食べた分の消費税は10%です。8%になるのは持ち帰りなどで、この150枚に8%は1枚もありません。つまり、補うと間違える例です。転記係には考えさせず、代わりに検算と二重読みで担保する。この回はその形で進めています。
出した指示
このフォルダの領収書・レシートの画像を全部読んでExcelの一覧にしてください。
日付、支払先、内容、金額、消費税、勘定科目、支払方法、元のファイル名。
勘定科目は燃料費・消耗品費・接待交際費・車両費・旅費交通費などから確認して選んでください。
手書きで読み取りに自信がないものは「要確認」の印を付けてください。
最後に勘定科目ごとの合計表も。まとめておいたほうがいいシートがあれば分けてください。
※音声で話した内容を、要点にまとめたものです。
読み間違いをどう潰したか
印刷レシートと手書き領収書では、やり方を変えています。
| 枚数 | やり方 | 理由 | |
|---|---|---|---|
| 印刷レシート | 100枚 | 10体×10枚を1回読み → 4種類の検算 | 数量×単価・小計・税・合計があるので、計算で自己検証できる |
| 手書き領収書 | 50枚 | 5体×10枚を、2人が独立に読んで突き合わせ | 紙に金額が1つあるだけで、検算が一切効かない |
手書きの読み手は、片方が「文字重視」、もう片方が「数字重視」と、わざと別の指示にしました。50枚とも、2人の結果は完全に一致しました。
読み取りはAI 20体が並列で74秒。エラーは0です。
かかった時間
全体で69分でした(12:01〜13:09。画面に出た値です)。
| 何に | 時間 |
|---|---|
| 素材を調べて段取りを決める | 12:01〜12:09 |
| 読み取り(20体並列) | 74秒 |
| 検算・勘定科目の割り当て | 12:11〜12:18 |
| Excel 8シートの作成と目視検証 | 〜12:30 |
| お客様向け文書(Word原本+PDF) | 12:30〜13:04 |
69分のうち、私が手を動かしていたのは10分もありません。確認して、お願いをしていただけです。

できた一覧表
8シート構成です。①領収書一覧/②勘定科目ごとの合計/③要確認/④支払先ごとの集計/⑤月別・支払方法/⑥明細(品目ごと)/⑦検算の結果/⑧この表の読み方。
150枚の税込合計は3,868,679円でした。勘定科目でいちばん大きいのは車両費で41.5%、次が燃料費の21.8%です。

★現物を見たら、辻褄が合いませんでした
要確認62枚のうち、AIが「読み取りに自信がない」と言った1枚だけを、現物で確かめました。

そこから「同じことが他にないか、150枚を全部調べて」と頼んだら、同じ形がさらに2組出てきました(7月5日と7月17日)。最初の検算に「同じ日・同じ支払先の突き合わせ」を入れておくべきだった項目です。この3組も、素材を作ったときに日付と支払先をそれぞれランダムに振った結果で、仕込んだものではありません。ただ紙の上では実際に重なっているので、実務なら拾うところです。
ほかにも、5万円以上なのに収入印紙が貼られていない手書き領収書が22枚ありました。印紙を貼る義務は発行した側にあるので、受け取った側の納税義務ではありませんが、相手方の印紙もれではあります。ただしこの素材は、手書き50枚とも印紙欄を空のまま作ってあります。22枚は、そのうち金額が5万円以上だったものの数です。
ここからが実際の業務です
一覧表を作って「3組おかしいですよ」で止まると、そこで終わります。同じ日に2回払ったのか、但し書きの書き間違いなのかは、紙だけでは決まりません。先方に聞かないと決まらないことです。
なので、分からなかったこと・先方に伝えることをまとめた確認文書(Word原本+PDF)まで作らせました。最初は行間が広くて5ページあったので、フォントと行送りを指定して直させて3ページにしています。
正直に書いておくこと
1. 「工具代」の1枚は、AIが見つけたのではありません。AIは「読み取りに自信がない」「業種と合わない」と印を付けるところまでです。同じ日のレシートと並べて食い違いに気づいたのは人です。ここは絶対に逆に言いません。
2. 軽減税率8%の領収書は1枚も入っていません。「混ざっていたが正しく処理できた」とは言えません。印字で10%と確かめられたのはレシート100枚です。手書きの50枚には税率が書いていないので、一覧では「10%(前提)」として扱っています。
3. インボイスの登録番号は、素材の作りの都合で150枚とも同じ番号です。なので、この回では番号の照合を判断材料にしていません。実物では効きます。
4. 但し書きが発行元の業種と噛み合わない領収書が45枚ありますが、これは意図して仕込んだものではありません。素材を作ったときの割り当てがランダムだっただけです。ただし紙の上では実際に噛み合っていないので、実務なら拾うべき矛盾ではあります。
5. 勘定科目は、AIが決めるものではありません。食事処の16件を接待交際費にするか福利厚生費にするかは、現場の実態を知っている人が決めることです。AIは「こう仮置きしました」までです。取引先など社外の人を交えた飲食で、1人あたり1万円以下なら交際費から除けます。ただし年月日・参加者の氏名と関係・人数などを書いた書類の保存が必要で、レシートだけでは足りません。社員だけの食事はこの枠に入りません。
6. できなかったこと・詰まったことが3つあります。数字がセル幅に収まらず「####」になった。明細のPDFが41行までしか出なかった。Wordの行間が広すぎた。前の2つはAIが自分で見つけて、原因を切り分けて直しました。Wordの行間は私が指摘して直させています。3つとも一発では通っていません。
この作業をやらせるべきか
毎月、領収書がまとまった枚数で溜まる会社なら、価値があります。建設・運送・営業所の多い会社のように、現場ごとに現金で払う場面がある商売です。
逆に、すでに経費精算システムで撮影→自動仕訳まで回っている会社では、ここまでの仕組みは要りません。そういう場合はそう申し上げます。
まずは、同じ日・同じお店で2枚あるものが無いかを見てみてください。二重計上に直結するので、ここがいちばん怖いところです。
御社の場合はどうか
一番めんどうな業務を1つだけ教えてください。それがAIに渡せるかどうかをお返しします。
「渡せない」という結論になることもあります。そのときは正直にそうお伝えします。